カギの故障=トイレの使用不可

営業の途中で急に便意をもよおし、訪れていたビルのトイレに駆け込んだ。男性用トイレには個室は1つしかなく、その一つはドアに使用不可と雑に書かれた張り紙が。あわてて1階下のビルの入口脇にある管理事務所に行って、使用不可の理由を聞いてみた。すると、トイレを使用不可としているのは、その個室の鍵が、壊れて使えなくなっているからということだった。それを聞いて安堵し、改めてその個室を使ってもいいか管理事務所の人に聞いてみると、鍵をかけられなくてもいいならどうぞということだったので、また2階のそのトイレに戻り、鍵をかけずに使用することができた。

例えば女性なら、鍵のかけられないトイレに躊躇するかもしれないが、私は男だし、大便を漏らすという一生の不覚をおかすより、鍵のないトイレで用を足すリスクを取る。リスクと言っても、その個室は洋式便器で、座りながらドアを押さえられるので、鍵がかけられなくても別に危険でもなんでもなかった。

しかもその時間、そのトイレに入ってくる他の人は皆無で、鍵どころかドアさえ、開け放していても全く問題なかったのではあるまいか。無事に用を足すことができ、個室を出ると、私はドアに貼られていた紙の使用不可の文字の横に、鍵の故障のためという文字を持っていたボールペンで書き加えた。私のように切羽詰まった状態でこのトイレに駆け込んだ人が、失望したりしないようにだ。

鍵の故障くらいでトイレを使用不可とするなんて、いかにも日本的と言えば日本的だろう。日本から近いアジアにもトイレにドアがない国もあるし、アフリカの奥地ではトイレは野外にそのまますると聞いたこともある。思えば排泄は人間が生きていくために必ずする、しなければいけない行為なのだから、秘め事のように扱う方が神経質すぎるのではないだろう。